フウォン・グエンさんは2012年に米国政府よりハンフリーフェローシップを取得し、1年間の非学位取得者レベルの研究プログラムに参加して、指導力育成と米国ミネソタ大学のカウンターパートとの共同研究を実施しました。 ワシントン大学のハンフリープログラムが主催するシアトルへの旅行中、2013年3月の夕食会で、盲人協力会の会長であるカーク・アダムスさんに会いました。彼女はこの時初めて、社会的問題に対処することをビジネスの目的とする起業家精神のモデルについて知りました。彼女は、そのシアトルの盲人協力会が、高品質の製品を生産しボーイングのような航空宇宙メーカへ製品を提供していると聞き非常に驚くとともに感銘を受けました。ホテルへ戻る道中でカークさんは彼女に言いました、「いつかあなたもベトナムの視覚障害者達を助けるために何かできるかもしれないですよ」と。フウォンさんはすぐにベトナムの視覚障害者に関する情報を集め始めました。
そこで得られた情報は、視覚障害者のうち8%だけが学校へ通い、15%がトレーニングコースに参加し、20%が職を得ている、という悲しい数字でした。ベトナムの視覚障害者達のほとんどは家族の元で暮らし、家族以外の人たちと接する機会がなく、自分への自信も将来への期待もない人達ばかりです。ベトナムの視覚障害者達にとって、マッサージセラピストは一つの最良の職業ではあるものの、残念ながらプロとして育成するに当たっては政府や他の機関などからの財務的・技術的サポートが非常に乏しいという状況にあり、それ故に彼らが働ける場所は低級のマッサージ店で、給料も1時間で1-1.5ドルという低賃金の上に、肉体的・性的虐待を受けているという現状となっています。マッサージ師を買春の一種だと見る社会の偏見により、彼らの仕事には敬意を払われていないのです。
ハーバードのケネディースクールの特別研究員でもあったフウォンさんは、入念な調査ののち、ついに将来のキャリアを約束されていた政府機関での高いポジションを辞めて、法律家である彼女の夫のファン・ヴ・アインさんと共に、2013年5月にBlind- Linkを設立することに決めたのです。ベトナムにてこの分野でのパイオニアとなるに当たり、Blind-Linkは盲目の人達に専門的な技術トレーニングと合わせて自己啓発のトレーニングを提供し、Omamori Spaを通じて高付加価値を生み出し、盲目の人たちによるマッサージの世間のイメージを変えていくことで、現状の問題に対処することにしました。